メディカルトピックス
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たかが貧血、されど貧血

「自分では貧血だと思っていたのに、医師には貧血ではないと言われた」逆に「無症状なのに、健康診断で貧血だと言われた」という方がいらっしゃいます。

 そもそも、医学的に「貧血」とはどういう状態なのでしょうか?血液中の血色素(ヘモグロビン:Hb)が低下している状態のことを貧血と定義されます。
血液は細胞成分と液体成分から成りますが、そのうちの細胞成分には白血球と赤血球と血小板とがあります。ヘモグロビンは赤血球の主要な構成成分で、ヘムという色素とグロビンというタンパク質からできています。ヘムには鉄が含まれており、鉄が不足するとヘモグロビンの産生がうまくいかなくなり貧血になります。また、この色素により人間の血液は赤く見えるのです。

 ヘモグロビンには、「酸素を運搬する」という重要な役割があります。ヘモグロビンが低下すると、酸素の運搬が十分に行われないため、それを補おうとするために、血液の循環が速くなったり呼吸が盛んになったりします。その結果、動悸や息切れが起こりやすくなり、心臓に負担をかけてしまうことになります。また、各組織の酸素欠乏により、倦怠感、めまい、立ちくらみ、頭痛等も出現します。これらの自覚症状は、自律神経失調等による一過性の低血圧でも見られる、いわゆる「脳貧血」と似ています。

 貧血の90%以上は、「鉄欠乏性貧血」です。我が国は欧米と比べてもその頻度は高く、特に30~ 40歳代の女性では3 ~ 4人に1人は鉄欠乏状態あるいは鉄欠乏性貧血であると言われています。
女性は月経による出血があり、体外への出血の際には赤血球中に含まれている鉄も一緒に失われてしまうことになるので、鉄欠乏になりやすいのです。
治療としては鉄を補給することですが、重要なのは鉄欠乏の原因の検索です。鉄剤を服用して一時的に症状が改善したとしても、原因が解決されていない限り、服用を中止するとまた元の状態に戻ってしまいます。
女性で慢性的な経過を辿る場合は、経血量の多さによることがほとんどです。子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患の可能性もありますので、婦人科診察が必要になります。
成長期や妊娠中は、需要が高まり供給が間に合わずに、鉄欠乏になりやすいと言えます。
成人男性の場合、消化管出血を示唆しており、胃癌や大腸癌の発見のきっかけとなることがあります。特に健康診断で貧血の進行や便潜血陽性を指摘された場合は要注意です。
貧血が徐々に進行した場合、体が低酸素状態に慣れてしまい、自覚症状があまり無いことも多いのですが、鉄欠乏性貧血では、匙状爪(スプーン状の爪)、嚥下困難感、異食症(氷をやたらにかじる)が見られることがあります。

 赤血球は、骨髄で造られ、約120日間働いた後、脾臓等で分解されます。鉄欠乏が無くても、何らかの理由で赤血球が十分に産生されなかったり、喪失や破壊が早まったりすれば貧血になります。
ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏、腎障害、白血病等の骨髄の疾患、溶血、薬剤の影響、放射線の影響等、様々な原因で貧血は起こり得るのです。

 健康診断で貧血を指摘された方、鉄やビタミンのサプリを服用していても症状が改善しない方は、隠れた重大な病気を見逃さないためにも、一度医療機関でご相談ください。

診療部長 上野川 久美
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